【最決昭和63年10月28日】行政行為の効力(2)-公定力と刑事裁判

【事実】

Yは、安全運転義務違反により交通事故を起こしたとして、その累積点数に基づき免許停止処分を受けるとともに、業務上過失傷害を理由に公訴を提起された(A事件という)。Yは、被害者らに傷害が発生しておらず、交通事故を起こしていないから、免許停止処分は違法であるとして、岡山県公安委員会に審査請求をしたが、請求棄却の裁決を受け、出訴期間内に取消訴訟を提起しなかった。その後、Yは、別のスピード違反行為により検挙された。この違反行為は反則行為にあたるものであったが、Yには、過去1年以内に免許停止処分の前歴があるため、反則者にあたらないとして公訴が提起され、l審はYを有罪とした。ところが、本件2審判決より前の時点で、A事件において傷害の事実の証明がないとして、業務上過失傷害の訴因についてYは無罪とされ、この判決が確定した。また、Yが本件につき控訴を申し立てた後、岡山県警察本部に対するYの申出により、警察庁情報処理センターに保管されている被処分者の運転ファイルから上記免許停止処分の記事が抹消された。2審もYを有罪としたため、Yが上告。上告棄却。


【決定判旨】

「免許停止処分の記事抹消は、その理由、手続、効果等からみて、右処分の職権取消とは認められない。また、・・・免許停止処分の当時、処分行政庁は、相当な根拠のある関係資料に基づき、被害者らが傷害を負ったと認めたのであるから、その後・・・刑事裁判において傷害の事実の証明がないとして、Yが無罪とされたからといって、右処分が無効となるものではない。そうすると、本件免許停止処分は、無効ではなく、かつ、権限のある行政庁又は裁判所より取り消されてもいないから、Yを反則者に当たらないと認めてなされた本件公訴の提起は、適法である。」


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