【最判昭和57年9月9日】付近住民等の原告適格(1)-保安林指定解除処分

【事実】

農林水産大臣(Y)は、長沼町の保安林(水源涵養目的で保安林指定された国有林)につき、航空自衛隊ナイキ基地等の用地にするとの理由で、保安林の指定を解除した(森林法26条2項)。そこで、同町の住民Xらが、指定解除処分の取消しを求めて出訴。1審はXらの請求を認容したが、2審は代替施設の整備によりXらの訴えの利益は消滅したと判断したため、Xらが上告。上告棄却。以下、原告適格を肯定した部分の判旨を紹介する(訴えの利益の消滅について、〈最判昭和57年9月9日〉を参照)。


【判旨】

「公益保護のための私権制限に関する措置についての行政庁の処分が法律の規定に違反し、法の保護する公益を違法に侵害するものであっても、そこに包含される不特定多数者の個別的利益の侵害は単なる法の反射的利益の侵害にとどまり、かかる侵害を受けたにすぎない者は、右処分の取消しを求めるについて行政事件訴訟法9条に定める法律上の利益を有する者には該当しない・・・。・・・他方、法律が、これらの利益を専ら右のような一般的公益の中に吸収解消せしめるにとどめず、これと並んで、それらの利益の全部又は一部につきそれが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとすることももとより可能であって、特定の法律の規定がこのような趣旨を含む・・・ときは、右法律の規定に違反してされた行政庁の処分に対し、これらの利益を害されたとする個々人においてその処分の取消しを訴求する原告適格を有する・・・。」
森林法の保安林指定処分は「一般的公益の保護を目的とする処分とみられる・・・が、法は他方において、・・・保安林の指定に『直接の利害関係を有する者』において、森林を保安林として指定すべき旨を農林水産大臣に申請することができるものとし・・・、また、農林水産大臣が保安林の指定を解除しようとする場合に、右の『直接の利害関係を有する者』がこれに異議があるときは、意見書を提出し、公開の聴聞手続に参加することができるものとしており・・・、これらの規定と、旧森林法・・・においては『直接利害ノ関係ヲ有スル者』に対して保安林の指定及び解除の処分に対する訴願及び行政訴訟の提起が認められていた沿革とをあわせ考えると、法は、森林の存続によって不特定多数者の受ける生活利益のうち一定範囲のものを公益と並んで保護すべき個人の個別的利益としてとらえ、かかる利益の帰属者に対し保安林の指定につき『直接の利害関係を有する者』としてその利益主張をすることができる地位を法律上付与している・・・ 。そうすると、かかる『直接の利害関係を有する者』は、保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を害された場合には、右解除、処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格を有する・・・。」
原判決は「保安林の伐採による理水機能の低下により洪水緩和、渇水予防の点において直接に影響を被る一定範囲の地域に居住する住民についてのみ原告適格を認めるべきものとしているのであるが、原審の右見解は、おおむね前記『直接の利害関係を有する者』に相当するものを限定指示している・・・。」


<無料会員登録で全100講義が無料で見放題!>あなたの時間は限られている!最も効率的な法律学習法!【資格スクエア】

“【最判昭和57年9月9日】付近住民等の原告適格(1)-保安林指定解除処分” への 1 件のフィードバック

コメントを残す